中高生向け湯之奥金山地学実習2023報告
今回の実習では、日本列島の形成過程において地質学的に大きな意味を持つ南部フォッサマグナの湯之奥金山を実習地として、プレートテクトニクス理論に基づく金山の形成過程と共に、このような自然条件を生かした産業遺跡である湯之奥金山の歴史について学びました。
2日目
この日は中山金山遺跡見学です。
湯之奥金山は中山、内山、茅小屋の3金山の総称であり、中山金山は湯之奥金山の中でも一番大きい金山です。金山の案内は甲斐黄金村・湯之奥金山博物館進藤館長と小松先生です。
中山金山は天守山地の毛無山中腹にあります。登山口は標高900mで中山金山は約1,450m、富士山の見える第2地蔵峠は1,550mです。休憩を挟みながら3時間足らずで第2地蔵峠まで登ります。
標高が高くなってくると、途中の休憩場所からも素晴らしい山の景色が見えてきます。
中山金山遺跡に到着しましたが、まずは第2地蔵峠へ向かうため、登山道から見える遺跡の平地で小松先生から説明を受けます。
そのまま登山道を進み、第2地蔵峠へ。
第2地蔵峠に到着しました。
富士山の麓には広大な平地が広がります。ポイントとしては、平野ではなく、全て富士山の溶岩が作った地形です。平野は海水準の変化と河川が作りますが、富士山麓の平地は溶岩が埋めることでできました。西側に広がる平地は今から17,000年〜8,000年前に富士山の溶岩が大量に流れることで形成しました。
今日は、富士山に雲がかかっていましたが、富士山の雄大な地形について観察しました。雲がかかっていない富士山の光景については動画をご覧ください!
地形を観察する様子。
第2地蔵峠で富士山溶岩の作った地形を観察し、記念撮影をしてから、中山金山遺跡に戻ります。
中山金山遺跡のテラスと呼ばれる人の手で造成された平地から遺跡中の坑道、生活域など大まかな配置について学びます。
坑道を見る参加者
戦国時代金山稼働当時の建物土台となる石積み
七人塚の石碑
少し高い場所からテラスを見下ろす石碑
石碑の場所まで登る参加者
石窯のあるテラス
石窯周辺
金鉱石をすり潰すための石臼の観察
一通り観察したところで、進藤館長が1989年から1991年にかけて実施された中山金山総合調査についてお話しくださいました。当時、調査団は山の中腹にテントを貼り、そこで寝泊まりしながら調査を実施したそうです!
最後の記念撮影をして下山します。
登山口到着。皆さん、お疲れ様でした。
下写真の彼は、参加生徒ながら山岳部キャプテンの経験を活かして、登山中、ドローンと救急用具セット(合計約3キロ)を持ち運んでくれました。ありがとうございました。
参加者感想
- 今回の実習は今後の人生における大きな体験となりました。鉱山も興味深い分野だと思いました。
- 普段聞くことが出来ないような話を沢山聞くことが出来て楽しかったです♪
- 自分にとって、2日間の実習は、火成岩が隆起し、風化・侵食、運搬、堆積し、マグマに取り込まれ、再び火成岩となるような一連のサイクルを学べる貴重な機会となりました。自然環境を見る目が成長出来たと感じています。
- 非常に楽しく勉強になった。学校ではやったことがないことや、本ではみたことがあったけど、ということを実際にやることができてよかった。
- 貴重な体験をさせていただきありがとうございました。
- 鉱石の同定をかなり正確にできるようになった。 金山について、歴史的、文化的側面以外に、地学的にも学ぶことができより理解を深められた。 また、普段ピークを目指した登山ばかりだったが、遺跡や地層等をみることを目的とした登山も楽しいと気づけた。
- 保護者として参加しましたが、非常に面白く、初めての経験したことも多く、是非また参加したいと思いました。
- 楽しかったです!自分1人では行こうと思えないところへ、実習という形で行けてよかったです‼︎
- 今回はとても貴重な経験をさせて下さり本当にありがとうございました。 今後の自分の研究に活かしていきたいと思います。
- 楽しく実習をすることができ、とても為になった。
- いろんなことを学びました。生活面でも学ぶ事が沢山ありました、自然の空気が新鮮でよかったです!
謝辞
本実習は東京応化財団の助成金により実施されました。実習にあたっては、山梨県峡南林務環境事務所の林道利用許可をいただき、登山口までの移動に関しては山梨交通のご協力をいただきました。また、実習企画段階から全般に渡り、公益財団法人科学技術広報財団齊藤仁志常務理事にご助言をいただきました。
事故なく無事に実習が無事に終了しましたこと、ルールを守ってくださいました参加者はじめ、各所にご配慮・ご支援くださいました関係者の皆様に感謝申し上げます。