コラム 鉄道と富士山とフォッサマグナ
毎日暑日が続きますね。今年はコロナ禍による自粛も減り、国内の観光地にも人々が戻ってきました。私が通勤時に通過する新宿駅は中央線特急あずさの始発駅でもあり、平日でも通勤時間のあずさはほぼ満席です。このあずさ号は後部が「富士回遊」の列車で、大月駅から富士急行線に乗り入れて河口湖まで行きます。山中湖と河口湖は富士山麓の代表的な観光地で、初めて富士山の麓に観光する人の多くが訪れるのはこの地域です。
さて、本日は夏休みから秋にかけての旅行にぴったりな、2回目以降の富士山周辺観光におすすめの南部フォッサマグナの景色を楽しむコースを紹介します。出発点は新宿で中央線に乗り甲府まで行きます。甲府から身延線に乗り換えて静岡まで出て、静岡から東京に東海道線か新幹線で戻るコースです。
2回目以降の富士山を巡るコースの例
それぞれの線には特急があり、中央線は「あずさ」か「かいじ」、身延線は「ふじかわ」、東海道線には超特急の東海道新幹線が走っているので、鉄道と景色の両方を楽しむことができる旅程とも言えます。この3つの線路の路線は古くから人々が往来した街道を大まかに辿っています。中央線は甲州街道、身延線は河内路(駿州往還)、東海道線は言わずと知れた東海道です。
中央線に乗り、高尾駅をすぎると山地に入ります。中央線は、山地の間を縫うように流れる桂川およびその支流の笹子川にそって進みます。しかし、山地の間を縫うような川沿いを進むだけでは越えることのできない場所が存在します。これが笹子峠であり、そこを通るのが笹子トンネルです。
笹子トンネルは1896年に着工し1902年に開通しました。1902年は明治35年で、開通当時は日本一長い鉄道でもありました。笹子トンネルは江戸時代に整備された甲州街道時代で言うと笹子峠にあたります。笹子峠は標高1096メートルで、甲州街道の最大の難所と言われる場所でした。
笹子峠とその周辺の交通の難所として有名な大菩薩峠、雁坂峠の地域は、徳和深成岩体という巨大な深成岩のへりにあたります。深成岩とは花崗岩に代表されるような、マグマが近く深くでゆっくり冷えて大きな結晶の集合体でできている岩石です。この大きな岩体は関東平野を流れる多摩川、相模川と甲府盆地を流れる富士川水系の分水嶺となっています。
地質を色分けして鉄道ルートを入れた地図
笹子トンネルを抜けると、鉄道進行方向に向かって左側(D席)には目の前に葡萄畑が広がり、その先には御坂山地から頭ひとつ抜き出たように富士山を拝むことができます。この景色の直くごに停車する駅は、その名も勝沼ぶどう郷駅です。ぶどうが好きな人は、秋になったらこの駅で降りてぶどうを堪能しましょう。
笹子トンネル直後の葡萄畑の風景。天気が良いと、山の向こうに富士山が見える
笹子トンネルのある山地のお隣には、昇仙峡という観光名所かつ水晶鉱山のある昇仙峡をつくった、ほぼ同じ時代にできた深成岩体があり、ダイナミックな光景を作り出しています。昇仙峡は甲府駅駅からバスで約45分で到着します。
昇仙峡と笹子峠はどちらも深成岩でできており、佐藤他(2015)によると、大まかには今から1500万年前から1200万年前の火山活動に伴ってできたと考えられています。温泉が好きな人は甲府の手前にある石和温泉か、昇仙峡手前の湯村温泉で温泉を楽しむことができます。
昇仙峡のシンボル覚円峰(かくえんぽう)